労働トラブルで最も多いのは解雇に関するものです。解雇は、会社側の一方的な意思により従業員との労働契約を解約することをいいます。
解雇には労働者の能力や成績不良を理由とする「普通解雇」、労働者の重大な責務による「懲戒解雇」、会社側の業績不振などによる「整理解雇」があります。いずれの場合も、従業員は、収入を得る道を断たれ生活の基盤を失うこととなります。従って、充分な配慮と充分な回避努力がなされずに行う解雇は、会社の存続をも脅かす労働トラブルへ発展する可能性があります。
平成20年の労働相談に次のような事例があります。
「社長と意見が対立することが多く、指示に従わなかったところ、1ヶ月後に解雇すると言われた。復職は望まないが、補償金を要求したい。」
皆様の中に、「指示に従わない従業員が悪い!当然クビだ!」とお考えになる社長さんはいないでしょうか。
労働契約も「契約」ですから、解雇の手続(30日前に解雇予告をするか、30日以上の解雇予告手当を支払う)をとれば、会社は労働契約を解約することができます。しかし、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、解雇権の濫用とされ無効になります。必ず認められるという「客観的に合理的」な理由というものはなく、個々のケースで判断されます。
では、「解雇権の濫用」とされないためには、どうすればいいでしょうか。
まず、何をすれば「普通解雇」「懲戒解雇」に該当するかを、就業規則等に具体的に提示しておくことが有効です。これは、従業員への抑止力としての効果もあります。
次に、解雇事由に該当する事実が存在した事が、客観的にわかる証拠が必要となります。事実があったとしても、解雇処分が厳しすぎると判断されれば「社会通念上相当」とは認められず、解雇権の濫用となりますので、解雇処分をする前に十分な指導・教育等を行っていることが求められます。
軽率な解雇が訴訟へと発展し、「解雇は無効」となれば、解雇言い渡しから職場復帰までの賃金、慰謝料の支払い等が生じます。たとえ解雇が認められたとしても、解決に至るまでには多くの時間・労力・精神的な負担がかかります。
解雇に関する労働トラブルを回避するには、「解雇権の濫用」とならないための対策が必要となります。
2010.3.1
物流ウィークリー 掲載記事より