前回、「事業の継続」を図るためには、「事業の継続を阻むリスク」特に「労務リスク」を知り、このリスクを「回避する努力」が重要であるとお伝えしました。
この「労務リスク」と同じくらい会社の存亡に係るリスクに「法令違反」があります。また、「法令違反」が「労務リスク」となるケースも少なくありません。従って、「事業の継続」を図るためには、コンプライアンス(法令遵守)が重要となってきます。特に従業員に関する労務コンプライアンスは非常に重要となります。
ご存知のように、昨年の行政処分基準が強化された中に、「飲酒運転」「社会保険等未加入」「最低賃金違反」と、労務に関する項目が入っています。
運送事業者の行政処分に、どうして労務の項目が入っているのでしょうか。企業の経営者は、社会全体がコンプライアンスを重要視していることを理解すべきです。
ここ数年、従業員個人と会社のトラブルは急増しています。それは、不景気の長期化から人件費削減、未払残業代問題が表面化したこともありますが、従業員が手軽に相談できる窓口が増え、潜在していたトラブルが顕在化したことが考えられます。情報化社会の現在、従業員は自らの権利や有益な情報をパソコンや携帯電話で手軽に得ることができるのです。それを、従業員個人と会社の問題であり小さな問題だと軽視すると、会社の存続にも影響する大問題になりかねないのが、現在の労働問題の特徴です。
「ある日突然、従業員が労基署に駆け込んだ」
「ある日突然、未払い残業代を支払えと通知が届く」
「ある日突然、自ら辞めたはずの社員が解雇されたと訴えた」
これは、珍しいことではなく、これが現状なのです。
これに対応し会社を守るのが、労務コンプライアンスなのです。
前回、会社の中には労務リスクが潜んでいるとお伝えしました。実は、知らずに法令違反をしている場合が多いのです。例えば、残業手当の正しい計算方法を知らなければ、法令違反だという意識がなく未払残業代が発生します。また、法令違反だという意識がないので、「従業員が労基署に駆け込む」、あるいは「未払残業代を2年分遡って支払うことになる」というリスクに気付きません。労務コンプライアンスは、法令を正しく理解することから始まります。
2010.2.1
物流ウィークリー 掲載記事より