かつて、労使紛争と言えば会社と労働組合の紛争でした。現在は、労働者個人と会社の間で起きる紛争が増加しています。この個々の労働者と会社との間で起きる紛争を、迅速かつ適正に解決することを目的に「個別労働紛争解決促進法」があります。そして、これを受けて各都道府県の労働局に「総合労働相談コーナー」が設置され、無料で労働者、事業主の相談を受け付けています。
昨年の5月に、総合労働相談コーナーが受付けた平成20年度の相談件数・内容が公表されました。その数は107万5,021件で、平成19年度と比較すると、約8万件(7.8%)増加しています。このうち、労基法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等の民事上の個別労働紛争に関するものが23万6,993件で、平成19年度より約4万件(19.8%)増加しています。特に、解雇・労働条件の引下げ・退職勧奨等によるものが増加しています。
この相談内容が会社に潜む労務リスクであり、相談件数の増加は労務リスクが拡大していると考えることができます。
総合労働相談コーナーでは、紛争の解決に向けて「助言・指導」や「あっせん」を行います。「あっせん」とは、公平中立な第三者(あっせん委員)が対立する個々の労働者と会社の間に入り双方の事情を聴取、整理し、話合いにより紛争の円満な解決を図手続です。「あっせん」は、会社側も利用できますが、多くの場合は労働者が利用します。
労働者が「あっせん申請」すると、会社に「あっせん開始通知書」が送られてきます。
その場合、会社はどう対応すればいいのでしょうか。
まず、「あっせんに応じない」という対応があります。会社があっせん(交渉のテーブルに着く)に応じなければ「あっせん打ち切り」となります。「あっせんに応じる」場合は、あっせん委員が労働者・会社双方の意見を調整し解決の道を模索することになります。その結果、合意に至る場合もあれば、合意に至らずあっせん打ち切りとなる場合もあります。原則、あっせん申請から1ヶ月以内に処理が終了します。裁判や労働審判に比べると迅速に解決が進みますが、その間、会社は対応する「人」、「時間」そして解決金を支払うことになれば「お金」を負担することになります。あっせん打ち切りとなった場合は、労働者は労働審判や裁判に持ち込むかもしれません。その場合、会社の負担は更に重くなります。
いずれにしても、労務リスクへの備えは万全にしておく必要があります。
2010.2.15
物流ウィークリー 掲載記事より